これやさん(55歳)は独身女性ですが、お子さんが3人います。ご主人とは、死別で、お子さんも全員独立し、いまは住宅ローンを払いながら、お一人で生活しています。
長年務めている会社は小さく、社長と事務担当のこれやさんの二人三脚の会社です。
しかし、その会社は負債が大きく、事実上倒産状態でした。
給料の未払いも多く、これやさん自身の家計は火の車でした。
これやさんは、住宅ローンを除く借入先が9社、借金額は500万円ほどの借金があり、毎月の返済額は、15万円に迫っていました。
受任通知発送後、利息制限法に基づいて引き直し計算すると、500万円の借金が、180万円にまで減額になりました。
そこで、私は、住宅資金特別条項付きの個人再生を検討しました。
しかし、財産状態を詳しく聴取すると、自宅以外にこれやさん名義の不動産があることが判明しました。
この不動産の価値を考えると、個人再生をとるメリットがなくなったのです。
私は、その不動産の売却を提案してみました。
その不動産を売って、売価代金から借入金が返済できてしまうからでした。
しかも、その不動産は、現在未使用だったのです。
ところが、これやさんは、私の提案に首を振りました。
理由は、売却すれば、売却したことが子供たちにいずればれるし、子供たちのために財産を残してやりたいという親心が大きかったのです。特に、借金で苦しんでいるということだけは、子供たちには内緒にしたかったのです。
こうなると、残された整理方法は、不動産を売却しない任意整理となります。
私は、これやさんに早急に仕事を見つけるように提案しました。長年務めてきた会社には、見切りをつけるのです。
幸いにも、すぐにパートが見つかりました。私は、家計をチェックして、ギリギリの返済額で各債権者と長期分割の和解交渉を試みました。
難癖をつけてくる債権者もありましたが、ほぼ提案通りの和解が成立し、これやさんの毎月の返済は、3万円弱となりました。
返済開始後、4年が経過しましたが、大きな遅れはありません。
これやさんの場合は、引き直し計算によって、債務が大幅に減額になり、任意整理が可能となったケースです。
不動産の売却は踏ん切りつかなかったものの、私の勧めにより、長年務めた会社に見切りをつけて、パートに出かけたのがよかったと思います。
紹介例は、実際にあった事件をもとに作成していますが、登場人物の「これや(仮名)さん」は実在しません。
任意整理の例をお分かりいただけるように、事件の骨子をご紹介しました。