個人再生は誰でも利用できるわけではありません。
民事再生手続開始には、個人債務者についてみれば
・「破産の原因たる事実の生ずるおそれがあるとき」
と定められています。(民事再生法21条1項)
破産の原因とは、支払不能や支払停止を意味し、「生ずるおそれのあるとき」とは、支払不能や支払停止が確実にくるのではなく、その恐れがあれば足りるのです。
ですから、借金の全額を余裕をもって3年程度の分割払いで返済できるようであれば、支払不能や支払停止の恐れはないでしょうが、返済できない恐れがある方は、個人再生手続をとることができると考えてよいでしょう。
しかし、支払不能や支払停止に陥った方は、返済能力の面から、申立てしたとしても、最終的に個人再生が認められることは、難しくなってきます。
これは、借金の一部とはいえ、原則3年間で圧縮された借金を返済していかねばならないからです。法律では、
・将来において継続的にまたは反復して収入を得る見込みがあって、
さらに再生債権(住宅ローン等を除く)の総額が5000万円を超えない
ということが条件となっています。
要は、平たく言えば、借金の全額となれば返済をすることができないけれども、一定額を減額してもらえれば、3年から5年の間にその減額した額は返済できるほどに、将来の収入の見込み(家計状況)であれば、個人再生が可能といえるでしょう。
今まで、個人再生は借金の一部を返済していきますと説明しましたが、具体的にいくら返済していくかをみてみます。
下表に示した通り、借金の全額が100万円未満なら最低弁済額は、債権額と同じとなり(A-B)、個人再生のメリットはありません。
しかし、100万円以上500万円未満なら、一律100万円の返済で済むわけです。(B-C)
500万円の借金なら、400万円分は減額されるのです。
借金総額が500万円以上、1500万円未満の人なら、5分の1に減額されます(C-D)たとえば、借金が1200万円なら、最低弁済額は、240万円となります。
一般消費者の方の借金額からすれば、個人再生手続をとる場合とは、B-C-Dラインの借金額(100万円~1500万円)が多いといえます。
個人再生は、給与所得等再生手続と、小規模個人再生手続の2つが用意されています。
給与所得等再生 | 小規模個人再生 | |
対象者 | 会社員、公務員等の給与所得者 | 原則個人事業主であるが、会社員も利用可 |
返済期間 | 原則3年、最長5年 | 原則3年、最長5年 |
返済額 |
最低弁済額の要件 清算価値保障の原則 可処分所得の要件 のすべてを満足 |
最低弁済額の要件 清算価値保障の原則 の2つの要件を満足 |
債権者の議決 | 債権者の議決権なし | 債権者の議決権あり |